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山井綱雄之會

11月23日(祝) 山井綱雄之會   国立能楽堂

仕 舞 「小袖曽我」辻井八郎 井上貴覚
「海人」高橋 忍
     「江口」當山禮子
「松虫」本田光洋
「融」金春安明

能    「藤 戸」
  シテ 前 漁師の母 後 漁師の亡霊   山井綱雄
   ワキ 佐々木盛綱 宝生 閑  
    ワキツレ 従者 大日方 寛 御厨誠吾
   アイ 盛綱の下人 善竹十郎
   囃子方 笛 一噌仙幸 小鼓 幸 清次郎 大鼓 亀井忠雄 太鼓 金春國和
   地謡 後列 地頭 本田光洋 副地頭 吉場廣明 辻井八郎 高橋 忍
      前列 本田布由樹 本田芳樹 井上貴覚 金春憲和
   後見 主 金春安明 副 横山伸一      

狂 言「萩大名」
  シテ 大名 善竹十郎   アド 太郎冠者 善竹大二郎
   アド 亭主 善竹富太郎   



仕舞。上手揃い。贅沢な気分。
やはりずば抜けているのは本田光洋師。緩急の付け方が独特の空気感を
作り出しているのだろうか。きゅっと早い動きから留めに移る僅かな移行期
の凝縮ぶりがすごい。
金春安明師の「融」はいかにもこだわりの風流人といった風情が、ご本人にも
通ずるところがあるのか水底からゆうらりと浮き上がるように感じられた。
それにしても謡は独特。魔術的な声。


能「藤戸」
重たいドラマ。
戦乱の世とはいえ、盛綱に敵を攻めるに都合のよい浅瀬を教え、褒美を
貰えるようなことをしたにも関わらず、卑しきものは口さがない、と
殺され海に沈められた漁師。
前シテはその漁師の母。後シテは漁師。
ワキにとっては〔藤戸の語り〕は重いものらしい。
晴れの場で民の訴えを聞こうと懐の広いところを見せるはずが、
大勢の前で「あなたは私の息子を殺したではないか」と詰め寄られるのだ。
ときは戦乱の世である。勝つためなら多少の犠牲はいたしかたなし、と
ことのいきさつを語る盛綱。ここは多分、戦なのだから仕方なかったのだ、
とあまりにも上に立ってもよろしくないし、かといって申し訳ない様子が
出すぎてもいけないのだろう。その点もちろん宝生閑師は危ういバランス
をこともなげに語りつくす。
長い語りの中で冒頭部分はどちらかというと「仕方なかったのだ」という
開きなおりが強く、後半になるにつれ「いくらなんでも申し訳ないことを
した」という気持ちが入ってきているのだと思う。
しかし、息子が殺められる場面を人から聞いていたとはいえ、当の手に掛けた
本人から聞くのは母にとっては全然違う。
身分も立場も完全に上の相手に、なんら武器の無い母が詰め寄る。
この場面、ずいっと立ち上がって床几に座る盛綱に対し上から打つような
格好になったのだが、時代や身分を考えると上からいくだろうか。
山井師の謡は大声を出すのが合わない役ではあるが、やや聞き取りづらかった。
面は曲見だそうだが、その中でもかなり個性の強いもの。
この母は狂ってはいないのだが、思いつめ過ぎて危うい表情にも見えた。

一噌仙幸師の笛はこうした悲しい物語の中で細く長く物悲しく、かといって
決して弱くは無いという旋律には最も適しているように思う。
それに対して掛け声があまりあっていなかった。打音は物語に合わせても
掛け声は合わせるということはしないのだろうか。

後シテ。盛綱が哀れに思い管弦講(供養)していると漁師の霊が現れる。
弔っているところに出てくるのは恨み言が言いたいからに違いないが
怒りに煮えたぎるというよりは理不尽さに納得がいっていない、という
風情。つまり思ったより静かだった。
面は川途(かわず)。専用面らしいが、面そのものも怒りというより
納得のいかなさ、この世への未練といったものを強く感じた。
殺した相手への恨み辛みは思ったほど感じず。
前シテ後シテ通じて、動きはキレがあって綺麗。後シテでは美しい声が
よく聞こえた。
舞どころが無い曲シテ方にとってはやりにくいのだろうか。


狂 言「萩大名」

萩の見事なお庭を太郎冠者のツテで見せてもらうことになった
大名。見せてもらうのは良いが、歌の一首も読めなくては、と
太郎冠者の知っている歌を覚えていくよう事前に予習。
しかし何とも覚えの悪い大名に、様々なサインから言葉を
連想するように太郎冠者は大工夫。
ところがいざ庭を見せてもらい歌を詠み始めると次々とサインを
読み違え、呆れた太郎冠者は主を置いて行ってしまい、歌の
続きが聞きたい庭の持ち主からは続きをせかされ…
とにかくすったもんだ。
大名のダメっぷりが際立つにつれ笑いが次第に大きくなる。
見所大受け。実に楽しい狂言でした。
富太郎さんのあの顔と声と体型は舞台上ではかなりの武器。
by Neko-Dama-c | 2011-11-23 14:00 | お能


つれづれ生きております


by Neko-Dama-c

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