人気ブログランキング | 話題のタグを見る

八世観世銕之丞静雪十三回忌追善能

2012.06.30(土)13:30 八世観世銕之丞静雪十三回忌追善能 観世能楽堂

連吟「海士」
  鵜澤久 鵜澤光
  地謡 観世淳夫 安藤貴康 北浪貴裕
      岡田麗史 清水寛二 西村高夫

能 【姨捨】
 シテ 観世銕之丞
  ワキ 宝生欣哉
   ワキツレ 大日方寛・御厨誠吾
   アイ 山本東次郎
   笛 藤田六郎兵衛 小鼓 大倉源次郎 大鼓 亀井広忠 太鼓 観世元伯
   後見 観世清和 永島忠侈 野村四郎
   地謡 谷本健吾 長山桂三 浅見慈一 馬野正基
       柴田稔 片山九郎右衛門 浅井文義 観世喜正
   

仕舞 「融」     観世 喜正
仕舞 「船弁慶キリ」 片山九郎右衛門
   地謡 安藤貴康 岡田麗史 清水寛二 西村高夫 泉雅一郎

一調 「勧進帳」
   観世清和 
    大鼓 亀井忠雄

狂言 [無布施経]
 シテ住持 野村万作
  アド施主 石田幸雄

仕舞 「花筐クルイ」 大槻 文藏
仕舞 「景清」    片山 幽雪
仕舞 「野宮」    梅若万三郎
仕舞 「西行桜」   梅若 玄祥
仕舞 「当麻」    観世 喜之
    地謡 馬野正基 阿部信之 山本順之 浅見真州 小早川修

能 【猩々乱】
 シテ 観世淳夫
  ワキ 宝生閑
  笛 一噌仙幸 小鼓 観世新九郎 大鼓 柿原弘和 太鼓 金春國和
  後見 片山幽雪 北浪昭雄 片山九郎右衛門
  地謡 青木健一 安藤貴康 野村昌司 北浪貴裕
      遠藤和久 長山禮三郎 観世銕之丞 小早川修



八世観世銕之丞静雪十三回忌追善能_d0091021_12565616.jpg

お隣の奥様二人連れが、もらったチラシを見ながら
「鵜澤洋太郎さんて、鵜澤久さんの旦那さんかしら、息子かしら」
「さあねぇ、でもどっちかよね」
…どっちでもない、とは思う。


連吟、鵜澤親子の力強い謡いで幕開き。
袴に差し込んでいた手を引き抜いた後、浮いてる袴をそっと押さえる仕草が好き。
なんとも美しいと思いますー。


姨捨、
月の原野にやってくる旅人たち。
現実とあの世との境界にあるような場であるのに、(あるからこそ?)
妙に現実的な道行。
ややハスキーな欣哉さんの謡いはしっかりと野太くさえありました。
確かにここは現実世界でもある。
そこへ現れる老女。
まだこの段階では半分はこの世の人のように見えます。
同じ地続きであっても、あちらとこちらは此岸と彼岸。
明確な壁がないので、こんな月の夜は言葉を交わすことも、姿を見ることもできる。
それも月の光があるから可能になること。
観世能楽堂は舞台そのものは良いけれど、鏡板の松が老松にしては赤すぎます。
そして照明もできればもう少し落としても良かったと思う。
銕之丞さんの声はどちらかというとハスキーな声。
でもこの日はいつもよりかなり澄んだ声にしていたようです。
大切に育てた甥に捨てられたのに怨むわけでもない。
でも、野に一人座り込んで明るい月光を見上げるとき、
その青白い光の中に見るのは過ぎ去った日の甥っ子の笑顔かもしれない。

美しい、というよりは素朴な長絹。微かに透ける様は木綿を思わせる。
苦渋よりは寂しさ、儚さを感じる面。
この人はどれだけの時間ここにいたのだろう。
毎月毎月満ちては欠ける月に、明るい満月の光に、暗い新月の夜に、
その満ち欠けに合わせるように自らの怒りや恨みも次第に浄化されていったのかもしれない。
手塩にかけて育てた実の子でなくとも、やはり我が子と呼べるような甥を
怨み続けることは無かったのだろう。
もし怨んだとしたら、自分が甥に掛けた思いや、幸せだった時間までも怨むようで
できなかったのかも…。

地べたにへたりこむように座り、ふっと月を見上げた顔は
どこか微笑んでいるような、諦めと満足とが入り混じったような表情に見えたのでした。

囃子はもう、非の打ち所の無い素晴らしさ!

もちろん、ワキやアイも。
中入りのとき、大好きな元信さん、東次郎さん、欣哉さんが等間隔に並んでいて
(並んでいるわけではありませんが)うっとり。

地謡も良かったです。かなり緊張している様子が伺えて固唾を飲むってこういうことね、と
見ていて実感。

ふ~良かったー…と余韻が残るうちに仕舞です。


九郎右衛門さん、凄いですねー。ハデに立ち回っていても、どこかに
しっとりした風情があるのが京の方の特徴かも…。

一調「勧進帳」
実際に『安宅』のシテで拝見しているのですが、まんじりともせずに声だけでも
充分に表現できるものはある、という。
真っ向勝負を余裕で受けてるような忠雄。顔が強いし音も強い。その鼓は板ですか?
と思うような音がする。

狂言。
この組み合わせ最強。異を唱える人もそれほどいないと思う。
全然ガツガツしてないけど、毎月貰ってるものは貰わないと…というあの手この手が
おかしい。

そして再び仕舞。これでもかっ。
大槻文蔵様は思いのほかお背が高い。細身ですっと立つ様はそれこそ菖蒲のようですが、
花筐クルイですからクルウわけです。お能で見てみたいですー。
何かこう陽炎のように匂い立つものがあるのです…。
そして「景清」。幽雪さんってもう、景清なんじゃないの?と思えるほど。
去年、能楽座で幽雪さんの「景清」観たのを思い出しました。
ただならぬ過去を持った老人。その過去が老人を巌のようにしている。
ただその過去は輝かしい過去でもあり、ときおり、煮えたぎるように老人の色の無い顔に
深く刻まれた皺に血潮を戻す…。ただもんじゃない感、ただの老人じゃない感が凄い。
万三郎さんは三番目ものが良いそうです。確かに良さそう~と思える野宮でした。

地謡、ちょーっと気のせいか一人分、声が浮いていたような不調和な感じが。



淳夫君は立派。去年と比べ別人のよう。
装束も面もとてもよくあっていた。妙にリアルというか生々しい面。
体格的に小さい淳夫君だが、この日はサイズ?が良いのか、一回り大きく見えた。
乱特有の足使いはいまひとつだったり、第一声が上ずったりはしたけれど、
その緊張は並ではないのは容易に想像もつく。
地頭が父、銕之丞さんで、ときおり銕之丞さんの声だけが聞こえる個所もあり、
まぁ力入って当然ですよね、と思いつつ拝見。
お隣に座っていた小早川さんの表情が一瞬弛んだように見えた。
普段の紋付にも言えることだが、小柄な人は一回り大きいものを身に着けるより
きちんとサイズの合ったものを着たほうが良いと思う。
閑さんのワキは、親孝行な男が猩々の酒の湧く壺のお陰で成功したというだけでなく、
何やらもう、徳が高い人の風情。相変わらず美しい光の収斂。ワキ座に座っているだけで
そこが明るい。
囃子、出だしのところ大鼓が少し妙に聞こえたがあれで良いのかもしれない。
華やかにおめでたくというよりはきちんと、分かりやすい囃子だったのかも。
後見の幽雪さんが最後の最期までしっかり見ていたのも印象深い。
それぞれの立場の重鎮たちが淳夫君の背中をしっかり見届けたのでした。



御祖父様もあの世で喜んでおいででしょう。
by Neko-Dama-c | 2012-06-30 13:30 | お能


つれづれ生きております


by Neko-Dama-c

最新の記事

鵜澤 雅 十七回忌追善能
at 2013-12-23 12:30
ユネスコ
at 2013-12-22 12:52
定例公演
at 2013-12-18 18:15
国立能楽堂30周年記念「あぜ..
at 2013-12-17 18:30
金春円満井会 特別公演
at 2013-12-15 13:00

メモ帳

検索

カテゴリ

全体
神社
占い

お能
スピリチュアル
2008 神社
映画

タロット
2008夢
2009~ 映画まとめ
2009~ 酒まとめ
2011.07~お能まとめ
2011 酒
2010 酒
2009 酒
パスワーク

2008 酒
toni
ACIM 課題
ACIM 本文
2012 酒
2013.1~ お能まとめ
未分類

以前の記事

2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 12月
2008年 11月
2008年 10月
2008年 09月
2008年 08月
2008年 07月
2008年 06月
2008年 05月
2008年 04月
2008年 03月
2008年 02月
2008年 01月
2007年 12月
2007年 11月
2007年 10月
2007年 09月
2007年 08月
2007年 07月
2007年 06月
2007年 05月
2007年 04月
2007年 03月
2007年 02月
2007年 01月
2006年 12月
2006年 11月
2006年 10月
2006年 09月

フォロー中のブログ

その他のジャンル

ファン

ブログジャンル

画像一覧